twanosuu 鳥が中心的な役割を果たす古代 yUraru 神話の例
ユーラルに於ける神話傳承
ユーラル yUraru は古代アーガルネユ Agaruneyu に發祥する帝國で、實質的な斷絕を挾みながらも長く續き、現在はアーガルネユの支配的な國家と成ってゐる。ユーラルには現在も神官團が有り、その祭儀は政治に於いて重要である。國家の公式の祭儀 が有り政治に於いて重要である點は我が國と似てゐる。この爲に、散逸したものは有るもののユーラルの古代神話 kAgarisuki や傳承は好く蒐集されてゐる。その硏究も、政治的な制約からは逃れられないものの、ユーラル帝國が樣々な時代を潜り拔けて來た事も有り好く硏究されてゐると言へよう。 ユーラルの古代神話はその成り立ちから槪ね四つに分類出來る。
カトリルイシス kAtoriruixis 北方の原神話に由來するもの。獨立して一つの神話と成ってゐるものは少なく、南方の神話群に埋め込まれて殘存してゐる。又後代の民話として形を變へ語られてゐるものも多い。カトリルイシス北方には古くからユーラル帝國の支配が廣く及んだ事から古形の殘存が少ない。 カトリルイシス南方の原神話に由來するもの。この神話群は以後のユーラルに於ける神話の基礎と成ってゐる。この神話群では世界は無秩序なものだと考へられてゐる。主神はトヮノスー鳥 twanosuu と云ふ屍肉食の小さな黑い鳥である。以後のカトリルイシス國やユーラル帝國での編纂に於いて多くは變形されてゐるものと考へられる。 カトリルイシス國時代に語られたもの。カトリルイシス南方の原神話と似たものが多いが、こちらはより秩序形成に重きが置かれる傾向が有る。主神も鼎月 kAno へと交替してをり、カトリルイシス國と神官團の起源も語られる。 ユーラル帝國時代に編纂されたもの。カトリルイシス國時代の神話を受け繼ぎつつも帝國を神聖とする爲に書かれた神話群である。ユーラルに於ける神學の基礎と成ってゐる。鼎月はここでも主要な神であるが、最高位は太陽 yUru に交替してをり、 トヮノスー鳥はしばしば太陽と同一視される。 我々が主に目にするのは 4 のユーラル帝國時代に書かれた神話群である。
カトリスイシス南方の原神話に於ける創世
現在廣く傳へられる創世神話は、無である yUru がトヮノスー鳥を產み、みづから世界を產むのに失敗したトヮノスー鳥の子達が yUru の力を借りて kAno を產む筋書きに成ってゐる。カトリルイシス國時代の文書に殘された話には、トヮノスー鳥はみづから在り、トヮノスー鳥達の鬭爭の中で yUru の力を使って kAno が作られる事に成ってゐる (cf. kAtoriruixis 時代の神話 肇〜ヒトne-sachirou.icon)。右に擧げたものはカトリスイシス南方に傳はる、トヮノスー鳥による創世を描いた斷片である。ユーラル帝國の創世神話は、右記の神話を基にカトリルイシス國時代の創世神話を道具として使って作られたものだと見做せる。 世界の根本が在らざる者 arInia であると云ふ發想はカトリルイシス南方の神話の特徴である。トヮノスー鳥は在る者 arIa に屬するが、他に依らずみづから在る者、產み出されずして產まれる者として在らざる者に通じてゐるとされる。所謂トリックスターの役割を擔ってゐると言へよう。 ここでトヮノスー鳥は互ひに同一で互ひに異なる者だと考へられてゐる。これはトヮノスー鳥が小さく黑いが故に視認しづらく、屍肉から唐突に飛び立つ神出鬼沒な性質から發想されたものであらう。トヮノスー鳥は自由に消え自由に生じるが故に、或るトヮノスー鳥と別のトヮノスー鳥とは同じ者でもあり異なるものでもある。そこで一羽のトヮノスー鳥は總てのトヮノスー鳥であると言はれる。またここは、トヮノスー鳥は互ひに言葉に依って區別されるが存在に於いては同一であるとも讀めよう。言葉に依ればトヮノスー鳥は互ひを區別し話し掛ける事が出來る。しかし存在に於いては同一であるから、互ひを啄む事には成らずみづからを啄む事に成ってしまふ。始めトヮノスー鳥は全にして一であった。飛行を續ける閒、變化し續ける閒トヮノスー鳥はただ無限であり全一であった。しかし飛行を停止して居着く所に言葉が生まれた。言葉の中ではトヮノスー鳥は有限であり互ひに區別され得る。言葉に從ってみづからを啄んだトヮノスー鳥は互ひを啄む事に成り、無限な存在に有限が導き入れられた。有限は無限を見失った。しかし有限はそこに物が產まれるきっかけでもある。これが創世だと見做される。以上は私見であった。
在らざる者と在る者との矛盾であったトヮノスー鳥は、失はれたものとこの世との矛盾へと換はる。この世は失はれた全一の閒隙(在らざる者)であって、ここにも在らざる者と在る者との動機は繰り返されてゐる。
カトリスイシス國時代に語られた神話に於ける文化の起源
これはカトリルイシス國時代の記錄に殘るトヮノスー鳥と鼎月の神話であり、文化の由來を說くものと成ってゐる。「__」の箇所は定說が無い。
一般に鼎月には序列が有るとされ、これはアーガルネユから見た月の大きい順に白い月 Isi、黑い月 Igax、赤い月 Ada である。トヮノスー鳥は先づ白い月に話し掛けられる。この時トヮノスー鳥が食べてゐるものはみづからの屍體だ。一羽のトヮノスー鳥は總てのトヮノスー鳥であるからこのトヮノスー鳥は死んでをり、また生きてそれを食べてゐる。死んだトヮノスー鳥は產まれるトヮノスー鳥と等しく、產まれたトヮノスー鳥が死ぬだけでなく未來に死んだトヮノスー鳥が過去に產まれる事も出來る。トヮノスー鳥の前に在るのは外化したみづからの死であり、調理されない自然であり、食べる事でみづからの體と成る死である。トヮノスー鳥は死骸を處理する自然の働きであり、自然の中に橫たはる死骸はトヮノスー鳥の表現であるから、それは產まれるトヮノスー鳥である。實際のトヮノスー鳥は人が死骸に近附くと唐突に中から飛び立つ事が有り、これがトヮノスー鳥は死骸から產まれるやうに思へたのであらう。白い月はトヮノスー鳥に問ふ。トヮノスー鳥はこれに噓を吐く。創造はトヮノスー鳥の認識に反して行はれる。白い月が「さうですか」と肯定すると、その噓は現實に成ってしまふ。イーフェ Ife はカトリルイシス周邊で古くから食べられた穀物であり、主要な食物であり稅の對象でもあった。白い月はトヮノスー鳥を媒介として農を產み 出した事に成る。 それぞれの月はトヮノスー鳥を媒介として文化を創ってゐる。黑い月はトヮノスー鳥に騙されて(「御前の持ってゐる物を何か代りに吳れたら」)翡翠と云ふ貨幣を得、商品を產み出す。商品はホドロの實 hOdoro であり、生の肉と對比される。赤い月は惡戲をするトヮノスー鳥を否定し名附け直す(「否、赦さない。御前はセモラー鳥 semoraa として死んだ」)事で狩りを產み出し、その餘りとしてトヮノスー鳥の裝束から鳥達が散逸する。 table:表
行爲の對象 行爲 見掛け 眞實 返答 創られるもの
白い月 噓を吐く イーフェ 自身の死骸 肯定する 農
黑い月 騙す ホドロの實 貨幣 交渉する 經濟
赤い月 惡戲をする セモラー鳥 裝束 決定する 狩り